シュガードールと毒を * 七沢綾美の詩ブログ

おとぎ話を忘れられない女の子のための詩集

Aesthetic Banquet

耽美でみだらで

行きましょう

Fall into the Aesthetic Banquet

こぼれる内臓も

「美しい」ただ一言で

星のオーナメントに変わる

文質彬彬と

容色正正と

引き裂いてぐちゃぐちゃにかき混ぜて煮詰めれば

醜悪な世界も

上手に飲み込めるでしょう

純白無垢でピュアなハートは

善良にして至高?

ええ 偽善と認めればね

血染めのドレスで さぁ踊りましょう

このスパイスは 魔法の薬

ヒトの骨から作ったの

上手に嘘がつけるようになるわ

立派な大人になれるわ

こぼれる内臓も

「美しい」ただ一言で

星のオーナメントに変わる

削いだ骨で

肉を断ち

吹き出る汚物に

まみれたら

神さまの意図がすべて分かるわ

耽美でみだらで

行きましょう

The Aesthetic Banquet

ひとりマカロン

また まちがえちゃったみたい

駅までひとり マカロン乗車

窓ぬらす小雨……ナミダ

背のびして履いた

ガラスの靴は 痛いだけ

ハートのスフレは

ふくらんで

あっという間に しぼんじゃった

甘いだけの思い出がいいよ

どうしてこんなに こんなに くるしい

時計の針を もどしたら

こわれたカップ

もとにもどるの?

カロンがゆれて

あたしをつきはなす

王子さまと

さいしょのキッスで ハッピーエンドで

ぜんぶ終わってしまえばいいのに

イエローフィーバー

踊らされて

倒れちゃって

いいの? って

笑って

黄色い靴底で

なぞるelastic wave

ダメってゆわれても

すぐ復活しちゃう

はじけるのが 僕ららしいね

ピンクの風船みたいに

わ! って おどかしてよ

嘘もいいよ

だって そのほうが

ページをめくれるもん☆

上に行くほうがいい?

でもたまには くだりもありで

でこぼこのフィールドも

全然オッケーです

倒れちゃって

寄りかかっちゃって

抱き合っちゃう?

なんて

マジカルフィーバーに

溺れようか

Bubble

ストロベリーバブルガム

ぱふん、と ふくらまして

パーマあてたばっかりの

ラベンダーのボブに

コロンふりまいた

きみが好きってゆった

あの曲は カセットに入れたから

今度貸してあげるね

きらきらの未来 うつせば

おおきな瞳には お星さまが浮かぶわ

リップスティックは

魔法のステッキなの

テレフォンベルを鳴らす

勇気をくれる

ピンクのレディオ DJのかすれた声 録音ボタン押して

シャラシャラ…

シャラシャラ……

きみからもらったラブレター

くずれた便せんの文字 好き…

愛のことばは 女の子にはゆわせないで

あたしずっと待ってるわ

ゆめみちゃう

レモン味のファーストキッス

プルルル…

プルルル……

名前ゆわなくても

あたしだって 気づいて

Puppy Honey Love

みつあみメイベル

はちみつ エプロン

そばかす散らした

頬をそめ

はじめての胸の高鳴りを

ハシバミの木に

そっと教えた

 

みつあみメイベル

むずかしい

本に見つけた

一節を

か細い文字で

しおりに刻んだ

 

わけもなく

落ちる涙は

まだ知らぬ

熱を思って

燃えては沈み

 

ため息とともに

生まれ出る

詩は野の花を

くるわせて……

 

みつあみメイベル

かわいい胸に

はずむ きらめきは

蜜のよう。

court voyage

ぬいぐるみさん

お手手つないで

ばらいろトランで

とおくのお国へ

あこがれていた

絵手紙の

セピアの景色に

会いにゆく

革のキャメルの

トランク持って

空色ワンピース

なびかせて

そびえる門や

ラトゥール見たり

オペラ座前の

あのカフェで

亜麻色のきみに

ウィンクしてね

ほろにがい

カプチーノ

泡に浮かんだ

ひそかな予感

始まりの

香りは

石だたみに乗って

わたしの背中を

そっと押すから

ばらいろトランで

知らないお国へ

わたしはあした

旅に出る

ルビーの指輪

まっかなヒールで 踏みつぶす

君の亡骸(なきがら)

薔薇の骨

 

アールヌーヴォの 階段に

落とすセピアの 憂うつと

死よりも甘い フルートのゆめ

 

あの寫眞(しゃしん)なら

破いて捨てたわ

血よりも深い モヒートを飲んで

 

何もかも 塗りつぶす

 

希望なら とうに無いけれど

 

君の眼孔の 最奥で

見つけたルビー

大事にするわね

あぶくになって…

深く 深く 深い

オーロラジャムの小びんに

目隠しで落ちる

午睡(ひるね)のように

ふわついて

さまよえば

詩人の恋が

生まれて 消える

……

遠い沙漠に

舞い降りた

菫(すみれ)の羽を

からりと揚げて

«それは私の、心ですから。»

 

あなたは ゆった

«あぶくになるまで、

愛したら……»

 

きっと、それでいいの。

 

間違いは、ないの。